どこまでが違法なの?チケット転売に関する規制の現状。

観戦したいスポーツの試合や、参加したいコンサートのチケットが売り切れていたら、あなたならどうしますか?

どうしても入手したいのであれば、まず思いつくのは、転売されたチケットの取り扱いがあると思しき街の金券ショップを訪れたり、或いはインターネットを通じて出品情報を検索するなどの方法が一般的でしょう。

そして、見つけたチケットの販売価格が、正規の販売価格より高額であっても、仕方なくその値段で購入することもあるかも知れません。

こうしたチケットが転売された事情は様々です。

恋人と行くつもりだったのにフラれてしまったとか、どうしても行きたかったのに当日外せない所用ができたなどの理由で不要となったチケットを転売するケースもあるでしょう。

一方で、もとより高額で転売する目的で購入したケースも少なくないと思われます。

こうしたチケットを転売するにあたっては、どのような規制があり、また、規制に反して転売をおこなった場合にどのような制裁が科されるのかについて、以下見ていきたいと思います。

1、転売目的でのチケット購入・転売は違法?

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転売とは、売買形態のひとつで、他人から買い取ったものを、さらにほかの他人にまた売りすることをいいます。

金券ショップがチケットを買い取りこれを他人に売るのはもちろん、小売店が卸商から商品を仕入れてお客に売るのも転売にあたります。日本の民法では、原則として売買を自由におこなってよいとされており、転売もこの原則に従いますから、麻薬や銃器、毒物など法令で自由な売買が規制されている物でなければ、基本的には何を転売してもよいはずです。

しかし、最近、インターネットを介したチケットの取引については、転売目的の有無により利用規約でこれを規制するのが一般的になりました。

例えば、「チケットぴあ」などの正規のチケットエージェンシーや、「チケトレ」などのチケット転売サイトでは、転売目的でチケットを売買する行為を禁止する規定を設けています(「チケットぴあ」会員規約個別規定:チケット販売11条、「チケットストリート」利用規約14条3号、「チケトレ」利用規約18条1号など)。

「チケットぴあ」の会員規約では、「チケットぴあ」を利用して転売目的のチケットを購入することも明示的に禁止しています。

また、ネットオークションでは転売目的でのチケットの出品を禁止 (ヤフオクガイドライン細則17項など)していたり、フリマサイトでも転売を目的としたサイト利用を禁止 (メルカリ規約10条2項)するなど、インターネットを経由したチケットの転売がサイトの利用規約に抵触する恐れが多分にみられるようになりました。

こうした規制はあくまでもサイト運営者が利用規約で定めた自主規制であって、国が定める法令のレベルでチケットの転売が直接に規制されているわけではありません。

しかし、サイト利用者は、利用規約に同意してサイトを利用するのですから、利用規約に違反してチケットを転売すれば、サイト運営者との関係では違法な行為となってしまいます。

2、なぜチケット転売は違法なの?

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中間取引者がチケットを転売して高額の利益を得たとしても、興行主は興行収入を得ているし、高いお金を払ってでもチケットを入手したいという需要がある以上、チケットの価格が高止まりするのは合理的な経済活動であるというのが、チケットの高額転売を正当化する主張です。

しかし、チケットの転売の構造をよく見てみると、むしろ、高額での転売を企図する中間取引者により市場原理がゆがめられていると、アーティストや興行主などは反論します。

なぜなら、チケットの販売価格は、興行が事業として成立する利益水準と、ファンが興行を楽しむにあたりいくらまでなら妥当な出費であるかのバランスで決定されるものであり、転売目的により正規のチケットエージェンシーからチケットを入手する中間取引者が現れると、本当に興行を楽しみたいファンにとってはその機会を奪われるだけでなく、転売チケットを高額で入手したファンが中間取引者に支払った購入額とチケットの定価との差額は、その中間取引者の手元に残ることとなって興行主には還流しないので、チケットの流通と対価の獲得とが非対称の構造となるからです。

この結果、転売チケットを購入したファンが不当に高額な出費を余儀なくされるため、アーティストなどにとっては、本来は販売することができたCDやDVDなどの楽曲や、ポスターなどのパブリシティを売り上げる付帯の利益を失うのみならず、高額チケットを入手する資金を得るため、別のチケットを高額で転売するなどの高額転売の連鎖が生じたり、窃盗や偽チケット販売、違法なアルバイトに手を染めるなどの犯罪を誘発する危険性も指摘されています。

さらには、チケットの高額転売を放置すれば、音楽業界やスポーツ団体全体のイメージの悪化を招くなどの間接被害が生じているとして、チケットの高額転売に反対する意見広告が2017年に新聞に掲載され、大きな反響を呼んだほか、ネットオークションやフリマサイトなどの利用規約も、相次いで転売目的でのチケットの出品を規制する改正をおこないました。

そして、改正された利用規約により転売目的でのチケットの取引が規制されることとなったことから、利用規約に違反したチケットの転売などが法令違反にあたる可能性がでてきました。

ところで、チケットの転売は、インターネットを介してばかりで行われるわけではありません。

チケットの高額転売は古くからある転売ビジネスの一つで、かつては、野球やプロレスなどの興行チケットを会場の周辺で定価をはるかに上回る価格で転売したり、お盆や正月などの帰省ラッシュの時期などに列車の切符を駅周辺で高額で転売する、いわゆる「ダフ屋行為」(切符などを意味する「札(ふだ)」をひっくり返した隠語が語源とされています)が横行したため、現在ほとんどの都道府県が条例でこの行為を規制しています。

さらに、チケットの転売を繰り返し継続しておこなう場合には、法律により許可が必要となる場合もあります。

こういった規制にはどのようなものがあり、それらに違反するとどのようなペナルティが課せられるのかを具体的に見ていきましょう。

3、チケット転売に関わる法律規制内容&ペナルティとは?

3-1 サイト利用規約による規制

通常、正規のチケットエージェンシーや転売サイト、フリマサイト、ネットオークションなどのサイト利用規約などではチケットの転売や出品を規制する規定を設けています。

先述したように、利用規約に同意したサイトの利用者がこれに違反してサイトを介して転売目的でチケットを購入したり出品したりすれば、サイトの運営者は利用規約違反を理由に違反者のサイトの利用を停止したりアカウントを削除することができるなどの制裁を利用規約で定めていることが一般的ですが、もう一点注意しなければならないことがあります。

それは、利用規約に違反することで民事上 刑事上の責任を追及される可能性があるということです。詳しく見ていきましょう。

3-2 法律上の責任

3-2-1 民事責任

利用規約とはサイト運営者と利用者との間の契約であり、利用規約に同意するということは、利用者は運営者に対して利用規約を守ってサイトを利用するとの約束をしたことを意味します。

従って、利用規約に違反すれば、民法(明治29年法律89号)415条に定めのある債務不履行責任や、同709条に定める不法行為責任を問われる可能性があります。

それぞれの規定による制裁の内容や効果には違いもありますが、いずれも損害賠償責任を問うことが予定されている点には留意しておきましょう。

3-2-2 刑事責任

刑事責任とは、逮捕されたり処罰されたりすることで償わなければならない責任というイメージでほぼ間違いはないと思います。

立件され有罪となったケースでは、利用規約に違反した転売目的でのチケットの購入が詐欺罪(刑法(明治40年法律45号)246条)にあたるとしたものがあります。

詐欺罪が成立すると10年以下の懲役に処せられることがあるほか、購入したチケットも没収されることがあります(同19条)。

一方、転売チケットを購入することも犯罪となることがある点にも注意が必要です。

正規のチケットエージェンシーや転売専門サイト以外のサイトではチケットの転売を禁止していることが多く、このようなサイトに出品されたチケットは、刑法上は盗まれたものと同じように扱われます。

このようなチケットを購入すれば、盗品等関与罪(同256条2項)により10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることがあります。

3-3 条例による規制

チケットの転売を規制する条例は、公共の場所で定価を上回る価格でのチケットの購入をあっせんするなどの迷惑行為を取り締まる目的で制定されています。

実空間での対面取引だけでなくインターネットという仮想空間での取引もその対象となり得、実際に逮捕事例もあります。

都道府県によって違いはあるものの、常習犯に対する加重類型を含めると、いずれも懲役刑を含む厳しい罰則が定められています。

3-4 古物営業法による規制

転売チケットは、法律上は「古物(こぶつ、いわゆる中古品)」として扱われます。

古物の取引を、営利目的で反復継続しておこなうときは、古物営業法(昭和24年法律108号)3条に基づく都道府県公安委員会の許可を得る必要がありますが、この理由は、事業として古物の取引をおこなう者に相応の注意義務を課すことにより、盗まれた骨董品や美術品の流通を阻止することが目的(同法1条)だとされています。

したがって、たまたま入手したチケットを、単に利益を得る目的で転売するような単発の取引には適用がありません。

しかし、単発の転売であっても、これを複数回おこなえば反復継続して取引をしたと評価される可能性はあります。

具体的に、どのくらいの頻度で取引をすればこの法律の規制対象となるかについての定量的な基準は示されていませんが、取引の頻度が事業として成立し得る程度であれば古物営業許可を得ておくのが適切と思われます。

なお、古物営業許可を得ることなく転売ビジネスとしてチケットの転売をおこなえば、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることがあります(同法31条1号)。

4、実際にチケット転売で逮捕者がされ出た4つの事例

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4-1 条例違反の事例

近年、コンサートの主催者側も、悪質なチケット転売を防止するため、入場の際、購入者の身分証明書の提示を求めるなどの対策を打つようになりました。

ところが、これをかいくぐり、偽造された身分証明書とともにチケットを転売したとして、神奈川県に住む大学生のグループが逮捕される事案が2018年6月に発生しました。

彼らは、約800人分の偽造アカウントでチケットの購入に申し込んで得た20枚のチケットを転売し、埼玉県条例(「埼玉県迷惑行為防止条例」)違反に問われたものです。

また、ダフ屋行為も後を絶ちません。

愛知県では、同じく2018年6月に人気アイドルグループのコンサートチケットを会場近くで転売しようとした男が、愛知県条例(「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」)違反で逮捕されています。

4-2 古物営業法違反の事例

2016年9月に、ヤフオクで人気コンサートグループのチケットを転売したとして、出品者が逮捕されました。

実は、当時、ヤフオクのガイドラインでは、転売目的でのチケットの出品は禁止されていませんでした。

しかし、出品者は、日常的にチケットを反復継続して転売しており、数年間で約300枚のチケットを売り上げ、1000万円を超える利益を得ていました。

なお、この事件を契機にヤフオクのガイドライン細則が改正され、転売目的でのチケットの出品が禁止されることとなりました。

4-3 詐欺罪に問われた事例

2017年6月に、和歌山県に住む男性が、転売目的でチケットエージェンシーを通じて電子チケットを購入し、この電子チケットを表示したスマートフォンを有償で貸し出した行為がチケットの転売にあたるとして、詐欺の疑いで逮捕されました。

チケット転売を詐欺に当たるとして逮捕された初の事例で、この後、転売目的でのチケット購入を理由に逮捕される事案が散見されるようになりました。

なお、男性は起訴され懲役2年6か月(執行猶予4年)の有罪判決が下されています(神戸地判平成29年9月22日)。

4-4 チケットキャンプ事件

最後に、逮捕事例ではありませんが、サイト運営者が違法な行為により書類送検されただけでなく、サイトそのものが閉鎖に追い込まれた事案を紹介します。

大手SNSの子会社が運営するチケット転売サイトの「チケットキャンプ」が2018年5月末日を以て閉鎖に追い込まれました。

直接のきっかけは、チケットを高額で転売するため芸能事務所の商標を無断で使用したとして、2017年12月に商標法違反で家宅捜索がされたことでした。

その後、人気歌手のコンサートの電子チケットを第三者名義で購入したことが詐欺罪に当たるとして運営会社の役員が書類送検されています。

結果的には不起訴となりましたが、チケットの高額転売を助長するような事業の在り方が問題視され、運営会社が清算されることとなりました。

5、こんな規制も!?コンサート・イベント特有の規制内容

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5-1 本人確認

チケットの購入者本人以外の者がコンサート会場に入場することを制限するため、本人確認をおこなってチケットの転売規制に取り組む試みもあります。

これは、チケット購入時に、購入者の顔写真や身分を登録し、会場の入り口で本人かどうかを確認することで、転売チケットの購入者を排除しようとするものです。

偽造された身分証明書を、転売チケットとセットで販売した大学生グループが詐欺の疑いで逮捕されたケースについては先ほど紹介したとおりですが、こうした転売チケット排除の取り組みが一定の成果を挙げているのも事実で、高額転売に一定の歯止めとなることが期待されています。

5-2 転売チケットの監視

大阪にあるUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)が、転売されたチケットでの入場の禁止を2015年に発表し、TDR(東京ディズニーリゾート)も2016年に同様の措置を発表しました。

転売の監視は、インターネットを経由して出品されたチケットの番号などを対象に行われており、これも一定の成果を挙げているようです。

結果的に、転売されたチケットを高額で入手した購入者が不利益を被ることになる点が気にはなりますが、事前に十分なアナウンスをしていることと、先述したように、転売チケットの購入者も盗品等関与罪に問われる可能性があることなどから、事業者側によるこのような措置も不当とは言えないでしょう。

5-3 チケットの無効化

5-2で紹介した規制方法と同様ですが、インターネットサイトに出品されたチケットを監視して無効化する取り組みも行われていま

す。転売チケットを無効とする旨の警告は、現在かなり広範におこなわれており、実際、ウェブサイトで無効とされたチケットを公示したり、転売チケットでの会場への入場を拒んだりする対応もとられています。

6、どうしても営利目的で転売をし たいなら

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このように、営利目的でチケットを転売するのは、極めて法的リスクの高い行為となっています。

古物商の許可を得てチケットの転売をすることはできますが、興行主が転売チケットの無効化や入場拒否などの対応をとっている状況でチケットを古物営業により販売することも避けたほうが賢明です。

古物営業法は、古物を取り扱う事業者に対して相応の注意義務を課しており、興行主によるチケットの転売規制が広くおこなわれている状況のもとでチケットを転売すれば、営業自体が違法と評価される可能性があるだけでなく、民事責任や刑事責任を問われる可能性もあると思われるからです。

7、小括

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現在は、インターネットを介した営利目的でのチケット転売は、極めてリスクの大きい行為であることを、まず認識しておきましょう。

そのうえで、利潤を得たいという動機で古物商の許可を得たとしても、興行主などが定めた規約により、転売されたチケットが無効とされた場合の法的責任を十分に理解しておくことが重要と思われます。

得てして、違法行為をおこなった場合に逮捕されることのリスクへの懸念が話題になりがちですが、民事事件で損害賠償を請求されるリスクも十分に理解しておかなければなりません。

損害賠償は破産免責の対象にもなりませんから、高額な賠償責任が認められれば、生活基盤を失うことにもなりかねないからです。

8、まとめ

○インターネットを利用したチケットの転売には多くの制約がある。

○利用規約に反したチケットの取引は民事責任だけでなく刑事責任も問われることがある。

○チケットを転売したり購入したりするには転売専門サイトを利用するのが適切

○転売チケットは無効化されたり入場を拒否されたりする可能性もある。

○反復継続してチケットの転売ビジネスをするには古物営業許可が必要だが・・・

○転売チケットは無効化されたり入場を拒否されたりする可能性もある。

○チケットの転売で稼ごうとするのは法的リスクの高い危険な行為であるり、避けたほうが賢明。