キセル乗車していませんか?電車の不正乗車に関する規制・罰則とは?

キセル乗車は法律で禁止されています。ということは、大学生であるか否かに関わらずキセル乗車をするべきではありません。

大学生になると通学時間が朝晩のラッシュ時に重なることがあり、疲れていても座ることができないことが多々あります。

そのため、定期券の区間外であることを知りつつ、始発駅まで行き、座席を確保して通学する折り返し乗車をしたい衝動にかられるかもしれません。

また、大学時代は、サークル活動、飲み会など出費が多くなりがちです。

そこで、サークルの合宿で遠出をするときや友達と旅行に行くときには、交通費を削減するためにキセル乗車をしたい思いにかられることがあります。

その上、キセル乗車は比較的簡単にできてしまうこと、周りの友達からキセル乗車を勧められることもあります。

しかしながら、キセル乗車や折り返し乗車は現在だけではなくあなたの将来にまで影響を及ぼす可能性があります。

この記事にはキセル乗車や不正な折り返し乗車に関する規制、罰則、これまでの事例、現在、将来に及ぼす影響などが書かれています。ぜひ最後までお読みください。

1、そもそもキセル乗車ってなに?

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1−1、キセル乗車とは

そもそもキセル乗車とはどのような行為を言うのでしょうか?

法律でキセル乗車という内容を定義されたものはありません。

一般的には、乗車駅からその近くの途中駅までの乗車券と降車駅近くの途中駅から降車駅までの乗車券を利用して中間区間の運賃を支払わない乗車、と考えられています。

簡単にいうと、乗車した全区間有効な切符を所持していない乗車ということになります。

また、最近は、意図的に目的地の先の駅に行って折り返し、そのまま目的地に戻る折り返し乗車も、不正な乗車に該当すると考えられています。

なぜなら、折り返し乗車の場合、一度、目的地で下車せずに先の駅に行っているため、この区間に対する有効な切符を所持していないからです。

したがって、この折り返し乗車も、乗車した全区間有効な切符を有していない乗車に該当し、不正な乗車になります。

 

1−2、キセル乗車の事例

皆さんは、最近はスイカなどのICカードが普及しているため、キセル乗車をすることはないと考えているかもしれません。

しかしながら、現在も紙の切符は使われており、特に新幹線を利用した長距離の移動の場合には紙の切符を目にすることが多いところです。

例えば、新幹線を利用して東京駅から新大阪駅まで移動する場合を見てみましょう。

東京駅から新大阪駅まで新幹線で移動する場合、乗車券と特急券の合計で13620円の料金が必要になります。

これに対して、キセル乗車をした場合はどうなるのでしょうか。

目的地である新大阪駅に友達がいる場合、自分は東京駅から新横浜駅までの切符を購入し、友達に大阪駅で入場券を購入して、手渡してもらいます。

その後、自分は大阪駅で入場券を利用して改札を出る、ということもありうることでしょう。

この事例では、東京駅から新横浜駅までの料金は合計で1360円と新大阪駅120円の合計1480円しかかからないことになります。

しかしながら、新横浜駅から大阪駅までの有効な切符を所持していないので、不正なキセル乗車に該当します。

1−3、折り返し乗車の事例

また、実際にはICカードを利用した不正な乗車もあります。

皆さんも一度は耳にしたことがある折り返し乗車が不正な乗車に該当することがあります。

折り返し乗車とは、途中駅から終着駅まで行き、そのまま始発駅で座席に座ったまま本来の目的駅に行くことをいいます。

この折り返し乗車も、すべての区間に有効な乗車券を所持していないのであれば、不正な乗車に該当します。

例えば、自宅がある中野駅から大学がある神田駅の通学定期券を所持している大学生を元に考えてみましょう。

この大学生が、帰宅時は神田駅から一度東京駅に行き、そのまま座席を確保して、東京駅から中野駅まで戻ることが折り返し乗車に該当します。

この折り返し乗車の場合、神田駅から東京駅までの区間の有効な乗車券を所持していないのであれば、不正な乗車に該当することになります。単に乗り過ごしただけ、という弁解は通じないことがあります。

1−4、キセル乗車や折り返し乗車のリスク

そして、キセル乗車、特に折り返し乗車などは多くの人が行なっている実態があることから、皆さんは問題がある行為ではないと片付けてしまうかもしれません。

しかしながら、キセル乗車や折り返し乗車は、民事的には鉄道営業法や鉄道会社の旅客営業規則に違反することになります。この場合、キセル乗車をした区間の通常の運賃に加え2倍の追加運賃を支払う必要があります。

また、刑事的には刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪や刑法130条の建造物侵入罪などに該当することになります。

このようにキセル乗車や折り返し乗車により、あなたは金銭的な損害だけではなく、刑事処分を受ける可能性があります。

大学生であれば、上記の危険性、現在および将来に及ぼす影響を自覚し、不正な乗車であるキセル乗車や折り返し乗車を控えるべきでしょう。

 

2、キセル乗車や折り返し乗車に対しての規制・罰則とは?

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具体的に、キセル乗車や折り返し乗車はどのような法律や規則に違反することになるのでしょうか。

2−1、キセル乗車の民事的な責任について

まずは、民事的な責任について、確認していきます。

普段、切符やICカードを使って電車を利用するときには契約関係について意識をしていない人も多いでしょう。

電車を利用することは鉄道会社とあなたとの間で運送利用契約が締結されたことになります。

そのため、鉄道の利用者には鉄道営業法、鉄道運輸規程や鉄道会社の旅客営業規則が適用されます。

そして、JR東日本の場合、旅客営業規則を定めており、この中でキセル乗車の対応を規定しています。

具体的にはキセル乗車などはJR東日本の旅客営業規則167条や168条が適用され、その乗車券が無効になります。

さらに、JR東日本の旅客営業規則264条や265条などにより、キセルをした当事者は実際に乗車したときに必要な運賃に加え、さらにその2倍に相当する金額を支払う必要があります。

例えば、新幹線を利用したキセル乗車は、実際に乗車したときに必要な運賃が1万円から2万円とすれば、最終的に3万円から6万円を支払う必要があります。

2−2、キセル乗車の刑事的な責任について

また、刑事的には、まず鉄道営業法29条に違反します。この規定に違反すると50万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

しかしながら、この規定は親告罪となっており、鉄道会社が被害を訴えない限り適用されることはありません。

これに対して、キセル乗車をすることやキセル乗車を助けるために駅に立ち入った場合には建造物侵入罪に該当します。その結果、懲役3年以下や10万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

さらに、キセル乗車などは刑法246条の2に規定されている電子機器使用詐欺罪に該当します。その結果、最大で10年以下の懲役に処せられる恐れがあります。

また、建造物侵入罪や電子機器仕様詐欺罪は親告罪ではないため、鉄道会社の被害の申告がなくとも、当事者は逮捕、起訴される可能性があります。

その後、裁判手続きが進み、仮に初犯を理由として、執行猶予が付いたとしても、前科として記録に残ってしまいます。

前科として記録に残ると、どのような不利益があるのか、就職活動を例にして考えみます。

通常、就職活動における採用過程で会社側から前科前歴を尋ねられることがあります。

この場合、仮に前科があるあなたは虚偽の回答をすることを迫られることもあります。

しかしながら、あなたが前科前歴について虚偽の回答をすると経歴詐称に該当するとして、せっかく新入社員として入社した会社から解雇されてしまう危険性があります。

このように、キセル乗車などをすることにより、現在の危険性として、多額の金銭の支払いをする必要に迫られるリスクがあります。

さらに、懲役という刑事処分を受けることで、大学を退学するリスクも存在しています。

その上、将来的には前科を秘匿するという経歴詐称や会社による解雇というリスクも存在しています。

このようなリスクを避けるためにも安易に不正な乗車であるキセル乗車をすることは避けるべきでしょう。

 

【電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)の条文と基本的解釈】

 

3、会社によっては、定期区間外の乗車が認められていることも!?

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鉄道会社によっては、定期券区間外の乗車が認められていることもあります。

例えば、大阪市営地下鉄では、有効な定期券および乗車券を所持していれば、途中乗降することなく指定経路外を乗車することが認められています。

そのため、通学定期券を所持していれば、定期券外の始発駅まで行き、そのまま折り返し乗車をすることは不正な乗車には該当しないことになります。

しかしながら、大阪市営地下鉄のような定期券区外の乗車を認めている他の鉄道会社は調べる限り見つかりません。

そうしたことから、通学定期券を所持している場合には、その区間内に限り使用するのが賢明と言えるでしょう。

 

4、故意でない場合には、救済されることも!

https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/07_syo/03_setsu/16.html

4−1、民事的な責任について

これまで見てきたように、キセル乗車や折り返し乗車は不正な乗車とみなされます。

それでは、不注意で切符をなくしてしまった場合、とても疲れていて座席で眠ってしまい目的地を乗り過ごしてしまったために折り返し乗車をした場合なども不正な乗車に該当するのでしょうか。

 

このような事例についても、鉄道会社の旅客営業規則に対応方法が定められています。

JR東日本の旅客営業規則291条は、

1項 旅客(定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客を除く)が乗車券面に表示された区間外に誤って乗車した場合において、係員がその事実を認定したときは、その乗車券の有効期間ないであるときに限って、最近の列車(急行列車を除く。)によって、その誤乗区間について、無賃送還の取り扱いをする。

2項 前項の取り扱いをする誤乗区間については、別に旅客運賃・料金を収受しない。

と規定しています。

この規定により、過失で切符を紛失した場合や寝過ごした場合には追加で料金を支払う必要が無くなります。

又、JR東日本の旅客営業規則に基づく当初の目的地まで無償で行くことができます。

ただし、注意点があります。JR東日本の旅客営業規則291条1項の中で、旅客から定期乗車券又は普通回数乗車券を使用する旅客が除かれています。

そのため、通学定期券を所持している大学生が寝過ごして折り返し乗車をした場合には、この旅客営業規則291条が適用されないことになります。

4−2、刑事的な責任について

それでは、過失で切符を紛失した場合や寝過ごして折り返し乗車をした場合、刑事的に処罰されることはあるのでしょうか。

この点については、刑法が過失犯を処罰する場合には特別に規定する必要があると定めています(刑法38条1項)。

例えば、故意に人を傷つけた場合には刑法204条の傷害罪が適用されますが、過失により人を傷つけた場合には刑法208条の過失傷害罪が適用されます。

それでは、キセル乗車が適用される電子機器使用詐欺罪はどうでしょうか。
この電子機器使用詐欺罪には過失電子機器使用詐欺罪のような規定や過失詐欺罪のような規定は定められていません。

そのため、過失で切符を紛失した場合や寝過ごして折り返し乗車をした場合には刑事的にも処罰されることはありません。

4−3、注意点について

上記のように過失で不正な乗車をしてしまった場合には責任を問われることがありません。

しかしながら、あなたが「不注意で切符をなくしました」、「疲れていて寝過ごしました。」と言っただけで、過失で不正な乗車をしてしまったことが認められるわけではありません。

鉄道会社の駅員や刑事事件であれば裁判所がその場の状況を元にして、あなたが過失で不正に乗車したかどうかを総合的に判断することになります。

例えば、寝過ごした場合でもあなたが乗車していた路線と所持していた切符に表示された駅名の路線が関係ないものであれば意図的に違う路線に乗っていたとして、過失ではないと判断されるでしょう。

したがって、安易に過失を主張すれば不正な乗車による責任を免れると考えることは避けることが賢明でしょう。

 

5、実際にあったキセル乗車事例〇選

https://datazoo.jp/n/警告+朝の通勤ラシュで一斉摘発+無意識「不正乗車」で運賃3倍!/13136980。

2017年度に、横浜高速鉄道みなとみらい線で不正乗車の一斉摘発が行われ、3日間で50人の不正が見つかり、悪質な22人から片道運賃の3倍の料金が徴収されています。

この事例では、折り返し乗車が問題とされており、駅から降りた直後に改札を出ずに逆向きの電車に乗り込もうとした人たちが摘発されています。朝のラッシュ時に座るために一度みなとみらい駅まで行き、座席を確保しようとしていたようです。

 

https://www.asahi.com/articles/ASKCS3VXLKCSUTIL00X.html

 

2017年度に、アイドルファン仲間の「キセル乗車」を手助けしたとして、私立大生が建造物侵入罪の疑いで逮捕されています。

この事例では、知人が岡山駅の改札を入場券で通り、新幹線に乗車し、東京駅で仲間から入場券を使って改札を出ようとしたところで、この私立大生が捕まりました。

 

https://www.j-cast.com/tv/2016/09/26278915.html?p=all

7年間、毎日150円の切符で近鉄の大阪府の矢田駅から三重県の名張駅まで行き、引き返して、矢田駅の隣の針中野駅で降りていた男が、電子計算機器使用詐欺罪で逮捕されています。

このような事例のように、非常に悪質なキセル乗車もあれば、日常的によく聞く通勤・通学時の折り返し乗車についても、不正乗車として問題になっていることがわかります。

たかが数百円のキセル乗車や折り返し乗車など見逃してくれる、と言った思い込みをしていると、あとで大きな被害を受ける羽目に陥るかもしれません。

 

6、しっかりと運賃を払って電車に乗ろう!

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当然のことですが、鉄道を利用する以上、鉄道会社が定めた運賃を支払う必要があります。

あなた一人のことであればたかが数百円と思ってしまうかもしれませんが、実際には大員数の利用者が不正なキセル乗車や折り返し乗車をしている可能性があります。

それにより、鉄道会社は多額の損害を被っていることになります。

鉄道会社が予想した収益を上げられない場合、最終的には鉄道料金の値上げにふみきるでしょう。

結果として、キセル乗車や折り返し乗車が将来の値上げに跳ね返ってくるかもしれません。

また、折り返し乗車による座席の確保を行なっていると、始発駅で他の乗客との間で揉め事に巻き込まれる恐れもあります。

特に朝のラッシュ時には学生も会社員も気が立っているので、些細なことでも揉め事に発展するリスクがあります。

このような金銭的なリスクや紛争回避の見地からすれば、大学生となったあなたは当然にキセル乗車や折り返し乗車などをすることは避けるべきです。

鉄道を使用するときは、事前に決まった運賃を支払って乗車したり、乗車券や定期券に記載された区間だけ乗車したりするのが当然のことです。

 

7、小括

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いかがでしたでしょうか。

キセル乗車や折り返し乗車は、日常よく聞くことであり、犯罪ではないと考えていたかもしれません。

また、犯罪だという認識はあったとしても、それほど大きな問題ではない、自分には関係がないと考えていたかもしれません。

しかしながら、キセル乗車や折り返し乗車が不正な乗車として取り扱われると、民事的には通常の運賃の3倍もの料金を支払う必要があります。

一度であれば数百円で済むと簡単に片付けてしまうかもしれません。

しかしながら、一度キセル乗車をして気づかれなかったとして新幹線を利用したキセル乗車をしてしまった場合、数万円の支払い責任を負う可能性があります。

さらに、通学時に疲れているから座席確保のために折り返し乗車を繰り返していた場合には数万円や数十万円の支払い責任に問われるリスクがあります。

また、キセル乗車や折り返し乗車は鉄道営業法だけではなく、刑法に違反する犯罪です。

そのため、逮捕されて刑事事件となった場合、大学を辞めるリスクや前科を負うリスクもあります。

前科を追った場合、新卒で入社するときだけではなく、転職をする場合にも、経歴詐称をしなければならないリスクが生じます。

経歴詐称はれっきとした解雇理由に該当するので、安易なキセル乗車が長期間不本意な経歴としてあなたにつきまとうことになります。

また、大学生になると、友達から「キセル乗車を助けて欲しい」と頼まれることもあるでしょう。

しかしながら、物事の分別がつく大学生であれば、はっきりと「キセル乗車は不正なので助けられない」という意思表示することで、あなたは現在および将来のリスクを避けることができます。

友達は重要ですが、不正行為をしてまで助ける必要はないでしょう。

あなたには輝かしい将来が待っているのであり、キセル乗車などで経歴に傷をつけるのはもったいないことです。

 

8、まとめ

・キセル乗車は不正な乗車となる。

・折り返し乗車も定期圏外で折り返しをしていれば不正な乗車となる。

・キセル乗車などは民事的には鉄道会社の旅客営業規則などに違反し、実際に乗車したときに必要な運賃に加え、さらにその2倍に相当する金額を支払う必要がある。

・キセル乗車などは刑事的には鉄道営業法29条に違反し、50万円以下の罰金に処せられる恐れがある。

・さらに、キセル乗車は刑法246条の3に規定されている電子機器使用詐欺罪に該当し、最大で10年以下の懲役に処せられる恐れがある。

・友達のキセル乗車を助けた場合には、建造物侵入罪などに該当し、懲役3年以下や10万円以下の罰金に処せられる可能性がある。

・刑事処罰を受けると前科として記録に残り、将来的に経歴詐称をしなければならないリスクがある。

・現在、および、将来のリスクを避けるために、キセル乗車や不正な折り返し乗車は控えよう。