肖像権にまつわるトラブル。自分の写真を削除してもらうには?

誰もがスマートフォンを持ち、気軽に撮影をする時代になりました。

撮影した写真をみんなに見てもらいたいと、若い人たちは競って画像投稿サイトにアップしています。

でも、もし、あなたが写った写真が、あなたに無断でアップされていたらどうでしょう?

この記事では、写真の撮影や公表に関連する権利と、その権利が侵害された場合にどうすればよいかについてご説明します。

1,そもそも肖像権って何?

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1-1,肖像権とは

肖像とは、人の顔かたちや姿に似せて、写したり描いたりした像のことをいいます。写真だけでなく、絵画や彫刻も含まれます。

そして肖像権とは、自己の容貌や姿態を、他人に好き勝手に、写真に撮られたり、それらを公開されたり利用されたりされない権利です。肖像権を持つのは、当然その肖像の本人となります。

写真に限っていえば、私生活を無断で撮影されたり、さらにその撮影された写真を無断で公表されたりするような精神的な苦痛から保護を受けることのできる権利となります。

肖像権は憲法や法令において明確に定められてはいませんが、憲法第13条で保障された幸福追求権に基づく人格権の一部とされています。

『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。(日本国憲法 第13条)』

このように肖像権は憲法13条に定められている人格権が根拠であり、人格権が認められるのは人だけです。つまり、人以外の動物や、工業製品、漫画やアニメのキャラクターには肖像権は認められていません。

ただし、工業製品は意匠権で、漫画やアニメのキャラクターは著作権で、それぞれ保護されている場合があります。建築物は、ごく一部を除いて著作権がありません。

1-2,肖像権を定めた重要判例

肖像権に関する有名な判例として、「京都大学管理法反対デモ事件(京都府学連事件)」での最高裁判決(1969年12月24日)をご紹介します。この事件の裁判では、デモ行進をしている学生の風貌を、犯罪捜査のためとして警察官が撮影したことの是非が争われました。

この判決の前段では、『個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するものというべきである。』とし、その人の承諾がないならばむやみやたらに撮影されない自由があることが述べられています。

肖像権の内容をより詳細に示した判例に、和歌山毒物カレー事件の被疑者の容貌等を撮影した行為、及びその写真を週刊誌に掲載し公表した行為が違法かどうかについて争われた最高裁判決(2005年11月10日)があります。

 

この判決の前段では、人はみだりに撮影されない人格的利益を有することが述べられています。承諾なく撮影することが不法行為法の上で違法となるかどうかは、以下の点などを総合考慮して判断するとされました。

・被撮影者の社会的地位

・撮影された被撮影者の活動内容

・撮影の場所

・撮影の目的

・撮影の態様

・撮影の必要性

後段では、写真をみだりに公表されない人格的利益も有しており、人の容ぼう等の撮影が違法と評価されれば、その公表も違法性を有すると述べています。

1-3,プライバシー権とパブリシティ権

肖像権に関連する権利として、プライバシー権とパブリシティ権の二つがあります。

プライバシー権とは、私事(自らの情報)をみだりに第三者に侵されない権利です。肖像権と同じく憲法13条の幸福追求権に根拠を持ち、人格権に則した権利となります。

プライバシー権は、表現の自由や報道の自由と衝突することがしばしばあります。

また、パブリシティ権とは、著名人の氏名や肖像が有する顧客吸引力から生じる経済的な利益や価値を、独占的に支配する権利です。財産権に則した権利となります。

例として、人気アーティストやタレント、スポーツ選手等の氏名や肖像を利用した商品や広告があります。

2,肖像権の侵害になるかどうかの基準とは?

 

肖像権は法律で明文化されておらず、基本的人権のうち、幸福追求権の一つと解釈されている権利です。そのために肖像権の侵害についての明確な基準はなく、ある行為が肖像権侵害となるかどうかは、諸々の状況に即して判断することとなります。

肖像権の侵害になるかどうかについて、一般的な判断基準をいくつか以下に挙げます。

・撮影や公表についての許可の有無

まずは被写体の許可があるかどうかです。

被写体から明示的に許可があれば肖像権の侵害にはあたりませんが、許可がなかったり黙示的であったりすれば肖像権の侵害にはあたる可能性が生じます。

ここで、肖像権の侵害に関しては、撮影だけでなく、公表についても考慮する必要があります。公表まで行うのであれば、公表についても許可を得ておかなければなりません。

撮影する際に、被写体となる本人やその保護者などに対して、どのような用途で使用するつもりなのか、公表するならどのような態様になるのかをきちんと説明し、口頭もしくは書面で同意を得ておくのが望ましいです。撮影側が「黙示の同意」を得たと思っていても、本当に被写体側が同意していないというようなことが往々にして起こりえるためです。

私的利用の範囲までであったり、展示会や紙媒体までならよいがSNSその他のウェブ媒体には不許可、などというように、撮影しても良いが利用や公表範囲に制限があるという場合もあるので、同意の範囲外にならないよう注意が必要です。

・被写体の特定の可否

これから先は、被写体からの許可がないとき、どのような条件であれば肖像権の侵害にあたる可能性が高いのか、あるいは低いのかという話になります。

被写体が中央に位置していたり、鮮明に映ったりしていれば、明らかにその写真においてその被写体をメインに撮影した意図があると認められます。この場合、無許可であれば肖像権侵害にあたる可能性があります。

一方、街の風景やイベントなどを撮影する際に不特定多数の群集に偶然写り込んでいた、メインとなる被写体の背後などに小さくぼやけて写っていた、というような、特定の人を対象としたものではない場合は、許可がなかったとしても肖像権侵害とはなりにくいです。

ただし、元の写真では不特定多数のうちの一人であっても、一部を切り取って拡大するなどして対象となる被写体を特定できるようにしたのであれば、肖像権侵害の可能性が生じます。

・撮影された場所や状況

どのような場所や状況で撮影されたかによっても侵害となるかどうかに影響します。

公園や観光地などの公の場所や、お祭などのイベントが行われているような状況では、一般に撮影される可能性が十分予測できるとされ、肖像権の侵害と認められにくいです。

ただし、諸般の事情により撮影禁止の場所もありますし、アーティストの有料ライブなどの状況では撮影禁止のことがほとんどでしょう。

・公表範囲の程度

写真が公開されれば、不特定多数の人に見られることになります。

被写体の意に反する公開があった場合、より多くの人に見られる(拡散される)可能性が高いほど、肖像権の侵害と認められやすくなります。

インターネットを用いているSNSは、拡散性が非常に高いとみなされています。

ここでは、肖像権の侵害にあたるかどうかの一般的な基準について見てきましたが、法律違反でなければ何をやっても大丈夫というわけでもありません。

常識やマナーの面からも、被写体となった人を不快にさせたり怒らせたりするような行為は慎んだほうがよいでしょう。

撮影のためにむやみに私有地や田畑などに立ち入ったり、三脚やフラッシュ撮影を使用したりすることが問題になるケースもよくあるようです。

3,肖像権の侵害になるケースとは

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以上の一般的な基準をふまえ、次はもう少し具体的な例を見ていきましょう。

ふだん何気なく行っている撮影や画像投稿サイトへの公表が、被写体の肖像権その他の権利の侵害にあたるかどうかの確認にもしてみてください。常識やマナーの観点も重要です。

・友人同士で撮影した写真を、無断でSNSなどにアップした

バーベキューや結婚式など、友人同士で写真を撮る機会は多いでしょう。ただし、無断で写真を公表してしまうと、肖像権やプライバシー権の侵害になります。親しい間柄であっても、写真をネットにアップしたいときは、被写体に許可を得てからするようにしましょう。

また、他人の撮影した写真を勝手にアップすると、著作権の侵害になります。なお、アップすると著作権がSNSサイト側に譲渡されるという規約があるところもありますので、利用の際にはめんどくさがらずに確認するようにしましょう。

・公園で小さな子供が遊んでいるのを撮影した

公共の場所ですので、不特定多数の人が写っているようなケースでは問題がなさそうですが、特定の人を撮影したものですと肖像権侵害となります。この場合では保護者の了解を得ておくことが必要です。

かわいい子供の写真といえども、ウェブに公開すれば、いかがわしい目的で見たりする人がいる可能性があるからです。

・散歩しているときに見かけた犬を撮影した

ペットは法律上は「物」とみなされ、肖像権はありません。しかし、飼い主を特定できるようなかたちでその写真を公表すると、飼い主のプライバシー権の侵害にあたる可能性が生じます。

また、一部を除いて建築物にも肖像権はありません。しかし、その建築物の表札が写りこんでいて住人が特定できるようなケースでは、同様にプライバシー権の侵害にあたる可能性があります。

なお、屋外に常設してある像やオブジェは、自由に撮影や公表ができます。

・お祭や初詣の写真を撮影した

写真に写っている人の顔を個別的に判別するというより、群集的に混雑の状況をとらえたというような写真であれば、肖像権の問題が発生する可能性は少ないです。

ただ、大勢のなかには見知らぬ人に突然カメラを向けられて不愉快になる人もいるかもしれませんので、トラブルにならないように十分な配慮が必要です。

・撮影した写真に著名人本人や、著名人を起用したポスターや看板が写りこんだ

意図せず写りこんでしまっただけであれば、その著名人の肖像権やプライバシー権やパブリシティ権のを侵害にはなりません。ただし、公表するならば、もちろん商用利用などはせず、該当部分を切り取ったりモザイクをかけたりするなどの処理をしておいたほうが、不要なリスクを避けられるでしょう。

芸能人の写真を意図的に隠し撮りしたり、さらに公表したりしてしまうと、完全にアウトです。

・テーマパークで撮影した写真をネットにアップした

私的利用の範囲内であれば大丈夫なことが多いですが、キャラクター等に関する権利に厳しいところもありますので、注意が必要です。商用利用であったり、そのキャラクターのイメージを損なうような利用であったりすれば、権利者から訴えられるおそれもあります。

また、周囲に写り込んでいる人がいれば、適宜モザイクなどの処理をしておきましょう。

「キャラ弁」の写真についての考え方も同様です。

・レストランの料理の写真をアップした

料理そのものには著作権がありませんので撮影はできますが、一声かけてことわっておくのがマナーです。おいしそうに写っていないと店の評判が落ちるとか、料理の提供に店独自の秘密のアレンジがあって他店に真似されたくないとかの、レストラン側の事情もあるからです。

高級なレストランでは撮影禁止の店が多いですし、店内が暗いからといってフラッシュ撮影をすれば周囲の他の客の迷惑になることもありますので注意しましょう。

・ウェブ上の画像をスマホやパソコンに取り込んだ

これは肖像権というより著作権の問題になりますが、勝手に販売したり再配信したりなどせず、私的利用の範囲内であれば、侵害にはなりません。

しかし、コピーガードがかかっているものを違法ソフトなどを用いて取り込んだり、海賊版とわかっているものを取り込んだりしてはいけません。

・本屋の中で本や雑誌の中身を撮影する

これも主に著作権の問題です。撮影した写真を個人利用するだけで、他人に渡したり公表したりしないのであれば、著作権法違反にも窃盗罪にもあたりません。しかし、現実に本屋さんのビジネスの妨害ですし、マナー違反でもあります。

また、それぞれの書店や出店しているショッピングセンターのルールとして、店内での撮影が禁止になっていることが多いです。この場合、本や雑誌の中身だけでなく、店内の風景や背表紙が並んだ本棚などの撮影も原則的に禁止ということになります。

撮影や公表に関するさまざまなケースを見てきました。

まずは明らかにホワイトリスト(撮影または公表しても大丈夫)といえるものと、ブラックリスト(撮影または公表してはダメ)といえるものを認識しましょう。グレーゾーンに関しては、その都度の具体的状況に応じて判断することになります。

4,肖像権侵害に関する事例を紹介

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肖像権の侵害になるかどうかについて、一般的な判断基準や具体例を見てきました。次は、実際の肖像権侵害に関する事例(判例)をご紹介します。

・原告女性の依頼により撮影された写真を、撮影したカメラマンが原告の承諾を得ないまま出会い系サイト会社に提供し、そのサイトの広告として使用された事例。

『被告カメラマンが、出会い系サイトの広告用に本件写真を提供して対価を得る目的で被告会社の事務所を訪れ、本件写真を提供した行為自体が、通常原告の同意の範囲外にある事柄であるというべきである。』と判断されました。また、写真の著作者であっても、被写体の承諾が不要になるわけではないとされました。(東京地判 2005.12.16)

・家庭用サウナ設備を購入した原告が、当該サウナの広告に自分の実名と顔写真を使用されたことを不法行為として損害賠償を求めた事件。

『人がその意思に反して氏名を使用されず、また肖像を他人の目にさらされずにいられる自由は、法的保護に値する利益である』として、サウナ販売会社に損害賠償を命じました。(東京地判1989.8.29)

・コンビニエンスストアの防犯カメラの撮影テープを、犯罪捜査のために警察に提供したのが、撮影されていた原告が肖像権侵害にあたると主張した事件。

原告の肖像権侵害の主張と、店側が安全確保等のための措置を両方認めた上で、各利益の衡量については『それが許されるかどうかは、その目的の相当性、必要性、方法の相当性等を考慮した上で、客の有する権利を侵害する違法なものであるかどうかを検討する必要がある』としました。(名古屋地判2004.7.16)

・病院に入院加療中の大手消費者金融業者の会長の姿を、写真週刊誌が撮影し、掲載した事件。

記事については名誉毀損とプライバシーの侵害、写真については肖像権とプライバシーの侵害であるとして訴えました。

判決では、会長という社会的活動をしている立場上、入院の事実報道の記事は公共の関心事であるとしてプライバシー侵害は棄却されました。しかし、写真掲載による肖像権とプライバシー侵害は認容され、『病院内は、完全に私生活が保証されてしかるべき私宅と同様に考えるべき』とし、人道上の見地からもこのような写真の公表は決して許容することはできないとしました。(東京地判1990.5.22)

・アイドルグループのタレントが、無断で自身の氏名や肖像を用いたカレンダーを製造販売されたことに対して、その販売差止めや損害賠償を求めた事件。

肖像権の財産的権利(パブリシティー権)に基づき、『当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である』とし、差止めと損害賠償を認めました。(東京高判1991.9.26)

以上、判例をいくつかご紹介しました。

肖像権は、スマホの普及や、それに伴うウェブ利用の拡大にしたがって問題となるケースが増えてきました。今後さらにウェブの利用が拡大していったり、新たなサービスが登場したりすれば、肖像権の侵害についての判例がまた生まれるでしょう。

5,肖像権を侵害されていると気づいたら

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さて、あなた自身が肖像権の侵害、当事者となることもありえます。

つまり、知らないうちにウェブサイトに自分の写真が勝手に掲載されていた、というようなケースです。

そんなとき、具体的にどんな対応をしたらよいでしょうか。

まず、そのウェブサイトのアドレスを記録し、スクリーンショットを取っておくなどして該当箇所を保存しておきましょう。

これにより削除請求の対象を確定します。また、のちのち裁判となれば、肖像権を侵害された証拠にもなりえます。

次に、その写真の公開差止めのために、削除を請求します。

この削除請求の相手方は、そのウェブサイト運営者でも写真投稿者でも、どちらでもかまいません。

ただ、投稿者が知り合いで直接言いにくかったり、投稿者が削除に応じてくれなかったり、そもそも投稿者が誰か不明だったりすることがあります。そのため、ウェブサイト運営者に対して削除請求するケースが多いようです。

サイト運営者に対して削除を請求する場合の伝達事項は、おおむね以下の通りです。ウェブサイトによっては、削除請求などの申し出の際に用いる専用フォームが用意されていることもありますので、その場合は設定されている各項目に適宜入力していきましょう。

 

[サイト運営者への削除請求についての伝達事項]

(Ⅰ)請求者に関する情報

・氏名

・住所

・連絡先(メールアドレスや電話番号など)

(Ⅱ)肖像権侵害に関する情報

・肖像権侵害の内容

例:自分の容姿が写真に含まれており、肖像権を侵害しています

・侵害の箇所の特定

例:このページのこの写真のこの部分に写っている人物です

・説明やその他伝達事項

例:肖像権の侵害であり、削除を請求します

ただし、私の個人情報を投稿者に伝えないようにしてください

この請求によってウェブサイト運営者が当該写真を削除した場合、削除請求者が誰であったかを公表することは基本的にありません。

ただ、著作権者が著作権侵害を理由に削除請求をした場合では、著作権者が削除請求者であることが表示されることが多いです(「著作権者の請求により削除されました」など)。

ただ、以上のようにウェブサイト運営者に対して削除請求を行っても、請求に応じて削除するかどうかはウェブサイト運営者の任意の判断になりますので、請求どおりに削除してくれないときもあります。投稿者の表現の自由などとの兼ね合いもあり、削除の可否を判断するリスクを負いたくないと考える運営者もいるかもしれません。

そのようなときは、裁判上の手続きに訴えることになります。

6,自分で対処出来なければ弁護士に相談

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6-1,肖像権侵害の罪とは

まず、肖像権侵害罪というような直接的な刑法罪はありません。

肖像権侵害の裁判を起こす場合には、憲法違反ではなく、民法709条の不法行為による損害賠償責任を根拠として訴えます。

肖像権を侵害されたときは、妨害排除請求(公表や使用の差止め)や損害賠償請求ができます。

『故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法 第709条)』

6-2,弁護士に仮処分の手続きをしてもらおう

画像投稿者やウェブサイト運営者に対して削除請求しても削除に応じてもらえないとき、またはそのような削除請求をしたという前提なしでも、裁判上の手続きを通じて削除その他の請求をすることができます。

仮処分の手続を請求する内容が裁判所に認められれば、拘束力を持って相手方に対処を促すことができます。

次のいずれか一方、または両方の請求をすることができます。

・差止請求

画像の公開を止めさせる請求です。

・損害賠償請求

画像の公開により生じた、精神的苦痛に対する慰謝料の請求です。

ただし、裁判上の手続きにまでなりますと、専門知識が必要になりますし、大変な手間や労力がかかることになります。専門家でない個人が対処するのは非常に困難でしょう。

また、無断で画像を投稿した相手方に対して損害賠償の請求をしたくても、相手がどこの誰なのかわからないケースが多々あります。この場合はサイト管理者やプロバイダに対する発信者情報開示請求によって相手方を特定する手続きも必要になり、やはり裁判所で仮処分を行うことになります。

ウェブ上に写真が残ったまま何もせず放っておくと、その写真は際限なく拡散され、被害が広がり続けてしまうおそれがあります。

一刻も早い対応が必要です。

このような法律や手続きに関する専門知識が必要な対処については、可及的速やかに、ウェブにおける権利に関する法律を専門にしている弁護士に相談されるようおすすめします。

7,リベンジポルノについて

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画像を無断でウェブで公開されてしまう中で、ほとんど最悪のケースと言えるのがリベンジポルノです。

リベンジポルノとは、元交際相手や配偶者などが、交際の破局や離婚などへの復讐(リベンジ)として、交際中や結婚中に撮影した裸の画像や性交渉の画像など(ポルノ画像)を、ウェブ上などに無断で公開してしまうことをいいます。

肖像権やプライバシー権を著しく侵害する犯罪であり、いわゆる「リベンジポルノ防止法(正式名称は、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)」により処罰されます。

リベンジポルノ防止法には、公表に関する罪と提供に関する罪が規定されています。公表罪では3年以下、提供罪では1年以下の懲役刑まであり、ともに大変厳しいものです。

『この法律は、私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって名誉又は私生活の平穏の侵害があった場合における特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 (平成十三年法律第百三十七号)の特例及び当該提供等による被害者に対する支援体制の整備等について定めることにより、個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的とする。』

リベンジポルノ防止法以外でも、刑法における名誉毀損罪やわいせつ物公然陳列罪、児童ポルノ禁止法における児童ポルノ公然陳列罪(被写体が18歳未満のとき)にもなりえます。

そのほか、「ポルノ画像をウェブにばらまくぞ」などと脅せば脅迫罪、「公開されたくなければ復縁しろ」などと迫れば強要罪、しつこくつきまとえばストーカー規制法違反となります。

リベンジポルノの被害者になると、平穏な私生活を営むのが困難になり、耐え難いほどの精神的苦痛を受けることになります。仮に加害者が処罰され、加害者から金銭による賠償などを受けたとしても、回復不能な被害が残ってしまうおそれがあります。

リベンジポルノを防ぐための最善の対策は、いくら親しい相手であっても、絶対にそのような写真を撮らせないことです。今仲が良くても将来もずっとそのまま仲がいいとは限らないですし、失恋や離婚は相手を極端な行動に走らせてしまうことが多いものです。

それでも、隠し撮りされたり、就寝中に撮られたりすることはありえます。もしリベンジポルノの被害に遭ってしまったと気付いた場合は、至急警察や弁護士に相談するようにしてください。親告罪ですので、被害者自身が刑事告訴する必要があります。

ウェブサイトへの写真削除申請や、削除の仮処分をしてもらうことも忘れないでください。

8,今後のトラブルを避けるために

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新しいスマホやカメラを購入したりすると、身の回りのいろんなことを撮影したくなります。また、自分の撮影した写真をたくさんの人に見てもらいたいと考えるのも自然なことです。

しかし、これまで述べてきたように、写真の撮影や公表にはさまざまな条件や制約があり、どんな人や物でも無制限に撮影・公表していいわけではありません。悪意がなかったとしても、被写体に関してトラブルになってしまうことがあります。

このようなトラブルを避けるために、あらためて以下のような点に注意するようにしましょう。

・大前提として、撮影禁止の人や物などは絶対に撮影しない

・撮影可能であっても、公表や商用利用などに制限があればそれに従う

・被写体が特定の人であれば、被写体から撮影の許可を得る

・不特定多数など許可を得られない場合では、必要に応じてモザイク加工などを施す

・公表を考えているのであれば、公表の許可も得る必要がある

・特に商用利用するような場合では、使用範囲について文書で残しておくほうがよい

・その他、モラルやマナーの面で必要な配慮をする

以上は、写真を撮影したり公表したりするときの一般的な注意点です。

自分が撮影される側、公開される側になることもあります。そのようなとき、自分がその立場ならどんなふうにされたら嫌だろうかと考え、自分がされたら嫌なことは他の人にもしないことです。

また、自分が写っている写真の扱いについて、周囲の友人やご家族などと認識を共有しておくようにすると、思わぬトラブルに遭いにくくなるでしょう。

9,小括

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手ごろな価格のデジタルカメラやカメラ機能付きの携帯電話が発売されたりして、写真を撮影するのが旅行や入学卒業などの特別なタイミングだけでなくなり、一般の人たちが日常的にさまざまな対象を撮影する時代となりました。

そして、SNSやスマートフォンの普及により、撮影した写真を公開するのも見慣れた光景になってきました。

しかし、被写体には肖像権がありますから、その撮影や公表にもおのずと制限が加わります。「カメラの暴力」は、ウェブ公開すると無限に増幅されてしまいます。撮影や公表をしようとするときには、肖像権に対して適切な配慮をするようにしましょう。これは、現代に必要なITリテラシーのひとつともいえます。

肖像権に関する基本的な事柄をわきまえていれば、写真を撮ることを必要以上にためらうことは少なくなるでしょう。

ところでこの記事では、肖像権を侵害される可能性のある「他人が自分の写真を」撮影・公表するというケースや、肖像権を侵害する可能性のある「自分が他人の写真を」撮影・公表するというケースについて考えてきました。

ここで、肖像権の侵害の問題は可能性は発生しにくいものの、「自分が自分の写真を」撮影・公表する際にも注意が必要です。

所有しているブランド品、高級店でのディナー、海外旅行など。本人としてはそれほど自慢している自覚がなくても、結果としてその写真を見た人の嫉妬心をあおってしまうことがあります。「リア充」アピールはほどほどにしておき、写真の公開範囲を限定することも考えましょう。

また、昨今の採用活動においてほとんどの企業は、ある程度の選考段階に残った志望者のSNSアカウントなどを探し出して、入念にチェックを行っていると言われています。

アルバイト中の悪ふざけなどの「炎上」するほどの写真ではなかったとしても、あなたの投稿写真は採用選考過程で絶対にマイナスにならないと言い切れますか?せっかく隙のない履歴書やESを作成し、面接でそつがない応対ができたとしても、意外なところでミスしてしまっていたとしたら、大変もったいないことです。

さらに、悪意を持った見知らぬ他人に個人や住所を特定されると、思いがけないトラブルや犯罪に巻き込まれるおそれもあります。最近のカメラに搭載されていることが多い、GPS情報(撮影場所の位置情報)を写真に付加する機能をオフにしておくなどの対応をするようにしましょう。

目の前で見ている人がいないからといって、知られたくない事実や知られるとまずい内心などは、なるべく公開しないほうが賢明です。ネット上の情報は半永久的に残ってしまい、際限なく拡散されるため、公開を後悔しても事実上ほぼ回収不可能だからです。

10,まとめ

・肖像権を明確に定めた法令はないが、憲法13条の幸福追求権に基礎がある

・肖像権には、みだりに撮影されない権利と、みだりに公開されない権利がある

・被写体の明確な許可がなければ、肖像権侵害の可能性がある

・肖像権侵害があったら、投稿者やウェブサイト運営者に削除請求する

・裁判上の手続きにより、仮処分や損害賠償請求ができるので、弁護士に相談しよう

・リベンジポルノに気をつけよう