ちょっと待った!免許証を偽造する前に知るべき法律と5つの逮捕事例

運転免許証を偽造するとどうなるか知っていますか?

 

運転免許証には、車を運転する免許を有することを証明する役割があります。安全で正しい運転ができるとして許可を得ていることを公的に証明するものです。

そして、免許の対象になった人の身分証明にも使われています。このように、運転免許証には2つの社会的に重要な役割があります。

 

この記事では、運転免許証を偽造したら、どんな犯罪になり、どんな刑罰を受けるのか、ということについて説明します。

 

1、運転免許証ってそもそも何?

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運転免許証とは、自動車の運転が許可されていることを示す公文書です。

道路交通法の規定に基づき、住民票のある各都道府県の都道府県公安委員会によって発行されます。2007年から全国で順次、ICカード免許証が発行されるようになりました。

また、運転免許証は身分証明書としても幅広く利用されています。

公文書なので発行元が信用できること、顔写真付きで本人確認が可能であること、さらに保有者が多いことなどがその理由です。

2、運転免許証を偽造するってどういうこと?

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運転免許証を偽造するというのは、正当な権限者に正規の手続きを経て発行してもらうのではなく、勝手にそれに似せたものを作成してしまうことです。

紙幣や硬貨を偽造するのが犯罪であるように、運転免許証を偽造するのも明らかに何らかの犯罪行為に当たるというのは、直感的にもおわかりいただけると思います。

免許証は、それ自体が直接に経済的な価値を有するものではありませんが、社会的に重要な信用基盤の役割を担っており、それを偽造することは、そのまま社会の基盤を揺るがすことにつながるからです。

一体なぜ免許証を偽造するのか、偽造にはどのような法律的ペナルティがあるのか、具体的にどんな偽造事件があったのか、はたまた偽造サイトはどんなものなのか、以下説明していきます。

3、なぜ運転免許証を偽造する人が後を絶たないのか

運転免許証を偽造する理由は、いくつか考えられます。

運転免許証を正規に取得するには、高いお金を払い、数ヶ月もの時間をかけて自動車教習所に通ったうえ、運転免許試験に合格しなければいけません。このお金や労力を惜しんだり、どうしても試験に合格できなかったりすることなどが、偽造の理由として考えられます。これは、時として人を殺す凶器にもなりうる自動車の運転技術を偽ることですから、許される行為ではありません。

 

次に、仕事などで運転するためにどうしても必要だから、という理由もありそうです。

バスやタクシーなどの運転手、運送業や配送業のドライバーなどは、免許がなければ仕事ができません。運転が本業でなくても、アルバイトや営業でいろんな場所を回るのに運転する必要がある場合もあります。

こういった職業では、運転する機会が多いために、小さな減点が積み重なって免許停止や取消しになってしまう可能性が大きくなります。うっかり更新を忘れてしまって免許証を失効してしまったということもあるでしょう。

そのような事情があったとき、免許証の偽造という選択をしてしまう人もいるかもしれませんが、個人の都合で勝手に公共の秩序基盤を破壊してはいけません。

 

そして、ニセの身分証明書として利用するため、という理由があります。

偽造した免許証を使って、携帯電話を不正に取得したり、銀行口座を不正に開設したりするのです。これらを自分で使ったり他人に売ったりして、犯罪行為に利用されることがほとんどです。

自分の身分を偽って消費者金融などからお金を引き出すために使う、という悪用する人もいるかもしれません。一説には、免許証は1枚で200万円の利用価値がある、ともいわれています。

自らの犯罪行為の実行や私利私欲のために、身分証明という社会的基盤を毀損するという、きわめて悪質な理由といえます。

 

家庭用のスキャナーやプリンター、画像加工ソフトなどの進化により、かなり本物に似ているニセモノを作成できるようになり、偽造のハードルが下がったことも背景にあると考えられます。

これは、役所や銀行の窓口などさまざまな場所で、ほぼ目視のみの確認しかしていないという盲点につけ込んでいるといえます。本来であれば、NFC機能のあるカードリーダーにIC免許証をかざして暗証番号を入力し、ICチップ内の情報と記載内容を照合するなどしなければ、本当に正しい免許証かどうかは確認できないはずなのですが、パッと見て本物の免許証らしければ、偽造免許証が本物として通用してしまうことがほとんどなのです。

自作したり、後述するような偽造サイトに依頼したりすれば、このようにして騙すのには充分な免許証が偽造できてしまいます。

 

日本の法定刑の設定にも原因の一端があります。

日本では、人に身体的危害を加えるような殺人や殺人未遂などの犯罪行為の場合、初犯でも長期間の懲役刑が下されます。しかし、財物に損害を与える詐欺や窃盗などの犯罪行為では、ほとんどのケースで執行猶予が付きます。もし懲役刑になったとしても、殺人罪の場合に比べれば短期間で済むことが多いです。

また、被害者への弁済金も、事実上ほとんど支払われずに済んでしまっています。詐欺師側が無資力であれば強制執行ができず、破産免責を受けることもあります。結局、ばれたところで懲役さえしておけば弁済まではしなくてもいい、と考えてしまうのです。

4、運転免許証の偽造に関する法律的ペナルティは?

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運転免許証の偽造は、有印公文書偽造罪偽造公文書行使罪にあたります。

文書偽造罪は、公文書偽造罪と私文書(公文書以外の文書で、権利や義務もしくは事実関係を証明する文書)偽造罪に分けられ、印鑑や署名の有無によって有印文書偽造罪無印文書偽造罪にも分けられます。

公文書のほうが私文書よりも重く、有印文書のほうが無印文書よりも重く処罰されます。

罪の重さ

公文書>私文書

有印文書>無印文書

運転免許証は公安委員会が発行しますので、「公文書」に該当します。また、公安委員会の印章が使用されていますので、「有印」になります。

よって、四つの類型のなかで、運転免許証の偽造は、作成権限がない人が公務所や公務員の署名や印章を偽造して公文書を作成したわけで、「有印」「公文書」偽造罪として、処罰の対象となります。

 

有印公文書偽造罪には、罰金刑が定められていません。よって、運転免許証の偽造で起訴されたときは裁判になり、1年以上10年以下の懲役刑に問われることになります(刑法155条)。

さらに、偽造した運転免許証を実際に使用すれば、偽造公文書行使罪が別途成立します(刑法158条)。

 

ただし、公文書偽造罪は目的犯です。行使の目的(偽造文書を提示し、あたかも本物の文書であるかのように誤信させる目的)がなければ成立しません。つまり、ドラマの小道具など、単に運転免許証に似たものを作っただけで、実際に使うという目的がなければ公文書偽造罪は成立しません。この点は裁判でもよく争われます。

 

また、運転免許証は公文書ですので、その顔写真部分にいたずら書きをしたり、裏面の備考欄(住所変更があった際に使われます)などに勝手にメモ書きをしたりすると、文書等毀棄罪に問われることがあります。記載事項を正確に読み取れる状態にしておかなければならない、ということです。

 

5、ありえない!運転免許証の偽造にまつわる逮捕事例

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運転免許証の偽造に関し、実際に起こった事件を5つご紹介します。

 

偽造免許を会社に提出しており事故で逮捕されたケース

・無免許で社有車を運転したとして、テレビ局のアナウンサー(当時)が道交法違反の疑いで現行犯逮捕された。追突事故を起こした際に発覚した。元アナウンサーはこれまでに運転免許を一度も取得したことがなく、会社に提出した免許証のコピーは偽造したとみられている。アナウンサーは諭旨解雇処分。

https://www.sankei.com/affairs/news/170418/afr1704180027-n1.html

 

事故時に自作の偽造免許を提示し逮捕されたケース

・トラックを無免許運転したとして運転手が逮捕された事件で、免許証を偽造した有印私文書偽造・同行使の疑いで、元トラック運転手=道交法違反罪(無免許)で起訴=を再逮捕した。自宅でパソコンなどを使って自分名義の運転免許証を偽造、事故を起こした際、事故処置手続きをしていた警察官に対し、本物と偽って提示した。

https://www.sankei.com/west/news/160307/wst1603070066-n1.html

 

偽造免許を海外に注文し輸送時に発覚、書類送検されたケース

・インターネットサイトで偽造運転免許を注文し発送させたとして、30代の男2人が有印公文書偽造容疑で書類送検された。2人は免許取り消し中で、任意の調べに対して容疑を認めているという。2人は8万円で偽造を請け負うサイトに発注し、免許証は国際郵便で中国から日本へ送られたが、税関の検査で相次いで発覚した。

https://www.asahi.com/articles/ASL262VP2L26OIPE003.html

 

免許書のなりすまし更新で逮捕されたケース

・弟になりすまし運転免許証を更新したとして、有印私文書偽造・同行使、免状不実記載、道交法違反の容疑で職業不詳の男を逮捕した。弟の住民票と弟宛ての更新通知書、自分の顔写真を貼った申請用紙の3点を用いて、勝手に弟の名前で免許証の更新手続きを行った疑い。

https://www.excite.co.jp/News/society_clm/20170630/TokyoSports_703835.html

 

偽造免許で契約をし逮捕されたケース

・運転免許証の偽造に関わったとして、有印公文書偽造などの疑いで、約10人の男女を逮捕された。男女は偽造した免許証で携帯電話を不正に契約し、他人に売却していたとみられる。売却された携帯電話がさらに別の犯罪に使用された可能性が高いという。

https://www.sankei.com/affairs/news/180509/afr1805090002-n1.html

 

比較的最近でも、免許証の偽造に関してさまざまな事件が起こっていることに驚かされます。本記事では氏名は記載しませんでしたが、ほとんどのニュースで実名報道されています。

 

6、運転免許証偽造業者は巷に溢れている!

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運転免許証偽造業者には、意外なほどあっさりと接触できてしまいます。

「運転免許 偽造」などのそれらしいキーワードで一般の検索エンジンで検索すれば、偽造○○などの名称のサイトをいくつか発見できます。品質第一、納品確実、個人情報保護などをアピールしていますが、れっきとした犯罪サイトです。

 

少々日本語がおかしい部分があったりすることから察せられるように、これらの偽造サイトは海外にサーバーを置いていることが多いです。このため、日本の警察には捜査権がなく、サーバー設置国の警察に情報提供をするだけしかできません。しかし、よほどのことがない限り、実際に現地の警察が動くことはないそうです。結果として日本での犯罪が野放し状態になってしまっているのです。

 

このようなサイトでは、詐欺被害に遭う可能性があります。偽造を申し込み、お金を払った直後に連絡が取れなくなります。詐欺前提でサイトを立ち上げては消えるのを繰り返しているのかもしれません。

被害に遭ったとしても、偽造を依頼したこと自体が人に言えない事情ですので、警察や消費者センターなどに訴えることはできず、泣き寝入りするしかなくなります。

 

また、個人情報を渡してしまったことにより、一時的にお金を詐取されるよりも深刻なケースになる可能性もあります。

自分でも忘れた頃に突然恐喝メールが届いたり、脅迫電話がかかってきたりするかもしれません。また、その個人情報を何者かに悪用されたり、自分になりすまされたりするかもしれません。

いずれにせよ、社会の闇の部分には関わらないに越したことはなさそうです。

7、運転免許証の偽造は絶対にダメ!

運転免許証の偽造は社会の安定や信頼を破壊する重大な犯罪行為です。刑罰も懲役刑となり、とても重いものです。

絶対にしてはいけません。

免許証番号はある特定のルールに従って付与されているため、単純な矛盾で偽造が発覚したりします。また、2007年にICカード免許証になったことにより、表面的な偽造以外の部分では本物に似せることは難しくなってきました。

免許証の偽造に関する犯罪が続けば、いずれは紙幣や硬貨並みかそれ以上の偽造防止技術が採用されるようになるかもしれません。

万が一、偽造がばれずにすんでいるとしても、常に発覚に怯えながらの人生を送ることになってしまいます。ある日、思いもしなかったような機会に、突然ばれてしまう可能性が高いです。

そのとき、人生が破綻します。

法律のペナルティも大きいですが、ニュースで実名報道されてしまったりすれば、その後の人生において周囲の信頼を得られにくくなるという社会的なペナルティも大きなものになるかもしれません。

8、小括

運転免許証やその偽造に関して説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

免許証は、運転の許可の証明というだけにとどまらず、身分証明書としての利用という、社会における大きな役割があります。それゆえに偽造の誘惑も大きなものになっていますが、もし偽造が発覚すれば、懲役刑という大きなペナルティを受けることになります。

運転免許証は、絶対に偽造してはいけません。

なお、免許証の紛失に気をつけることはもちろんですが、安易にコピーしたり写真撮影したりしないようにも注意しましょう。

もしもコピーや撮影画像が流出すれば、記載事項をもとに免許証を偽造されたりするほか、インターネットを通じた契約で悪用されるなど、原本の紛失と同様の被害が発生するおそれがあります。

9、まとめ

 

・運転免許証には、運転資格の証明と身分証明の2つの役割がある

・免許証を偽造した場合、公文書偽造罪と偽造公文書行使罪に問われる

・比較的最近でも、免許証を偽造に関してさまざまな事件が起こっている

・偽造サイトは身近に存在するが、決して近寄ってはいけない

・免許証を偽造してはいけません