アルバイトでタイムカードが無い!適法?違法?知っておきたいこと

アルバイトのとき、仕事の始めと終わりに何気なく使っているタイムカード。

このタイムカード、何のために使っているのでしょうか?

仕事の前に着替えて準備する時間、仕事の後の片付けの時間。これらの時間は労働時間に入るでしょうか、入らないでしょうか?

タイムカードの記録と実際の労働時間が合っていない、支払われている給与が少ない気がする。そんなときはどうすればよいのでしょうか?

この記事ではこれらの疑問にお答えします。昨今話題の”ブラックバイト”を見分けるヒントにもしてみてください。

1、アルバイトにおけるタイムカードとは?

an_photos / Pixabay

昔ながらのアナログタイプのタイムカードを使用しているところでは、機械上部の差込口に縦長の厚紙カードを差し込むと、その時点の時刻が記録されます。

タイムカードは労務管理に使用されるもので、働いた時間の実績を記録するものです。労務の発生のたびに開始時刻と終了時刻を記録し、一定期間ごとに労働時間を集計して給与計算を行います。

テレフォンアポイントなどでは歩合制のところもありますが、多くのアルバイトは時給制です。時給制では働いた時間数に比例した給与が支払われますから、タイムカードは給与の支払い計算の根拠になるものです。

2、なぜタイムカードを使うの?

TeroVesalainen / Pixabay

 

タイムカードを使う理由は、使用者側が労働時間を管理するためです。労働基準法は、使用者に対し、労働者の労働時間を適切に管理するよう求めています。労働者が何時間働いているかを把握する労務管理は使用者側の責務であって、労働者側に記録や申告の義務があるわけではありません。

なお、労働基準法では労働者保護の規定が細かく規定されています。会社員だけでなく、アルバイトやパートなど、雇用形態を問わず、すべての働く人に適用されます。

法律ではタイムカードを導入しなければならないとまでは指定しておらず、導入しなくても違法ではありません。どのような方法であれ、適切に労務管理ができてさえいればよいのです。しかし、簡便な労務管理の手法として、多くの事業所で採用されています。

タイムカード以外の方法では、店長が目視で確認する、紙やパソコンなどの端末上の帳票に記録する、パソコンなどの機器の起動時刻と終了時刻を記録する、などがあります。

3、タイムカードを切った後の仕事に対してのお金はどうなる?

geralt / Pixabay

労働時間の始めと終わりの時刻を記録するタイムカード。しかし、タイムカードを押す前や押した後に、仕事に関係することをしていませんか。
まずは、いったい労働時間とはどんな時間なのかについて説明していきます。

3-1、そもそも労働時間とは

労働時間とは、労働者が労務提供の債務の履行行為をした時間です。労働時間に該当するかどうかは、以下の2点から客観的に判断されます。

・使用者の指揮命令下に置かれているかどうか、明示・暗示の指示の有無

・債務の本旨に則った労務の提供かどうか

労働時間は、労働基準法や判例において定義されています。会社や店舗の労働契約や就業規則などによって定義されるものではありません。

労働時間について争われた有名な判例が、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12.3.9)です。この判例では、次のように定義しています。

『労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めにより決定されるべきものではない。』

元々この事案では、「『作業服への着替えや保護具の装着を始業時間前に行うように』との会社の指示があったとき、そのような準備時間は労働時間に該当するかどうか」が争われました。

判決は、「使用者が準備行為を労働者に義務づけているならば、それは労働者が使用者の指揮命令下に置かれていることになり、労働時間に該当する」とされました。

使用者から参加や実施が義務付けられているならば、始業前のミーティングや清掃なども労働時間に該当すると判断される可能性が高いでしょう。

使用者の指示の有無のほか、社会通念上、実作業前後の準備行為を必要とする理由があるかどうかも、労働時間に該当するか否かの判断根拠となります。
例えば、作業服や保護具などの着用は、工事現場や工場内などでの作業に従事する際には必要といえます。しかし、デスクワーク職の制服着用は必ずしも必要とまではいえない場合もあります。
ミーティングでは、単なる挨拶や企業理念の復唱などでなく、業務事項の伝達などが行われているかどうかもポイントになります。

3-2、給与が支払われる仕事

以上のように、使用者の明示・黙示の指示があり、労働者が使用者の指揮命令下で労働している時間は労働時間にあたります。

実作業前後の行為の時間は、その行為が義務付けられていたり、社会通念上必要と判断されれば、労働時間となります。

つまり、開店の準備や片付けに要する時間は、一般的には労働時間に該当すると考えられます。着替えについてはケースによります。

前後の時間以外で、労働時間中ではどうでしょうか。

労働基準法34条では『労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない』としています。休憩時間は、労働者が労働から解放され、完全に自由に利用できる時間でなければなりません。

しかし、休憩時間とされる時間であっても、実質的に即時の対応が要求される「手待ち時間」と認められれば、労働時間になります。

例えば、店舗内で休憩していても客が来店し次第対応しなければならない場合や、事務所で来客当番や電話番として待機している場合は、結果的に対応が不要だったとしても、労働時間に含まれることがあります。

同様に「仮眠時間」や「自宅待機時間」であっても、一定の業務上の指示がなされているような場合は、労働時間にあたるとされる可能性があります。

懇親会への参加は、通常は飲食を共にし親睦を深めることを目的としており、労働契約上の業務との関係性は低いと考えられます。ただし、参加が義務付けられていたり、参加しないと不利益が課せられたりする場合には、労働時間として取り扱うことになるでしょう。

3-3、給与が支払われない仕事

逆に、使用者からの明示・黙示の指示がなく、労働者が使用者の指揮命令下で労働しているといえない時間は労働時間ではありません。

労働時間に該当するかどうか判断が分かれるものには、移動時間と持ち帰り残業時間があります。

仕事場への移動は、労働力を使用者のもとへ持参する行為であり、労働提供債務の履行の準備行為とされます。労務提供以前の行為で使用者の指揮命令下になく、労働者に対する拘束の程度が緩いことから、原則として通勤時間は労働時間には該当しません。

直行直帰や出張の場合でも同様ですが、物品の監視など特段の指示がある場合の移動時間は、労働時間に該当するとされます。

労働者の自宅で行われる労務は、私的な生活の場には使用者の指揮監督が及ばないとされ、一般的には労働時間として認められません。

しかし、業務量が過大である、業務完成期限が逼迫しているなど、所定の労働時間内に仕事を完成させることが困難で、業務を自宅に持ち帰って作業せざるをえないような状況では、労働時間として認められる場合があります。

また、使用者から持ち帰り残業を暗示された場合(明日までに提出、でなく、「その資料は明日の会議で必要」とだけ伝えるなど)や、持ち帰り残業の事実を知りながら黙認している場合も該当します。

これによれば、アルバイトのマニュアルを読む時間も、それを自宅で読んでくることを指示されたのであれば、労働時間に該当する可能性があります。

4、本来、タイムカードはこう使うものです!

geralt / Pixabay

タイムカードは、これらのことを考慮して運用されなければなりません。

つまり、始業時間前のさまざまな準備、就業時間後の片付けなどに要する時間も、使用者の指示があったり指揮監督下にあったりすれば、労働時間に参入されることになります。

ここで、もし前後に10分ずつ労働時間が長くなっても、時給制では1時間単位で給与が支払われるので意味がないのではないかとの疑問をお持ちかもしれません。15分単位、30分単位で労働時間を管理している事業所も多くあります。

しかし、労働時間は本来『1分単位』で記録、清算されなければならないのです。15分単位、30分単位、ましてや1時間単位で端数切捨てなどは、事業所内のローカルルールに過ぎません。塾講師での授業コマ数に応じた給与というのも同様です。

基本は1分単位で計算します。もし15分単位で管理しているなら、15分未満の切捨ては労働者が不利になるので不可、切り上げなら有利になるので可です。

また、単にタイムカードの時間数の合計分だけではいけません。労働時間や労働時間帯などに応じて、残業手当、深夜手当てなどの割増手当ても支給しなければなりません。

さらに、地域ごとに定められた最低額以上の賃金を支給しなければならないのは言うまでもありません。試用や研修などの期間中の減額特例は、最長6ヶ月、最大減額率20%まで認められる場合がありますが、行政に申請し許可を得なければ無効です。

仕事を覚えるまで無給で働かされた、試用期間終了後も給料を上げてもらえなかった、違法です。

このように、労働基準法をはじめとする諸々の労働法制は、立場の強い雇用主から立場の弱い労働者を守るという目的のものが多いです。

しかし、労働者側にも一定のモラルは求められます。タイムカードに記録されるべきなのは労働時間であって、単なる職場への入退場の記録や滞留時間ではありません。アルバイト仲間と談笑したりする時間、漫然と作業したことで通常よりも余計にかかった時間、残業代稼ぎ目的で居残っただけの時間などは、労働時間とは言いにくいでしょう。

5、タイムカードにまつわる法的ペナルティ事例〇〇選

witwiccan / Pixabay

実際に起こったタイムカード関連での事件を、4つご紹介します。

運送会社のパート従業員男性の勤務時間を短く改ざんした「裏タイムカード」が作成され、賃金の未払いがあったとして、労働基準監督署が是正勧告出勤日の一部が欠勤にされたり、実際より短い勤務時間にされたりした別のタイムカードが勝手に作られ、給料の算定に用いられたという

http://www.sankei.com/west/news/170525/wst1705250073-n1.html

ドラッグストアの従業員の出退勤時間を15分単位で切り捨てる処理がされ、時間外賃金が未払いになっているなどとして、労働基準法違反の是正を求め、労働基準監督署に申告をおこなった

http://news.livedoor.com/article/detail/15053640/

労働者12人の約2ヶ月分の賃金(総額277万3828円)を全く支払わなかったとして、労働基準監督署は居酒屋店と同社の代表者を地検に書類送検アルバイト9人に対する不払いはタイムカードで労働時間が特定できたため、最低賃金法4条違反による立件、正社員3人は労働時間を特定できず、労基法第24条違反による立件となった

https://www.rodo.co.jp/column/51020/

大学病院が、医師の勤務時間を就業規則で定めずに違法な残業をさせ、労働時間の把握も怠っていたなどとして、労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告や改善指導を受けた同病院の職員によると、職員の出退勤時間を打刻するタイムカードはあるが、医師の多くは出勤か退勤のどちらか一方のみを打刻するよう病院側から指導されていたという

https://www.asahi.com/articles/ASL1J73VML1JULFA02J.html

タイムカードは、給与支払いに関して事実上ほとんど唯一の根拠です。しかし、使用者の都合で不適切な管理をされているケースが、このように実際にあるのです。

労働者が労務提供の債務があるのに対して、使用者には提供された労務に対する給与支払いの債務があるはずなのに、自らの債務を逃れるために不正をしたということです。

ブラックバイトと呼ばれるようなアルバイト先には、アルバイトを酷使するが労務管理は疎かで、適正な給与を支払わないような使用者が多いです。

なお、ここでは使用者側の犯罪を取り上げましたが、もしタイムカードの改ざんを労働者側が行った場合、詐欺罪や電磁的記録不正作出・供用罪になる可能性があります。

6、タイムカードはないけど無給の時間があるときはどうする?

1820796 / Pixabay

もし、タイムカードのようなもので労働時間を記録していなかった場合はどうしたらいいでしょう?

本来、労働時間の管理は雇用者側の義務であって、労働者側に記録や申告の義務があるわけではありません。

しかし、上記のニュースでも実際あったように、ブラックバイトと呼ばれるような事業所では、労務管理が不十分なことも珍しくありません。使用者が自分にとって都合のいいように労務記録を作成したり、事実を改ざんするなどのおそれがあります。

タイムカードなどを使用していないときは、労働時間や給与に関して自衛するため、自分で労働時間のメモをとっておくなどの対応をしておいたほうがいいでしょう。

最近のスマホなどのカメラは、撮影時刻のほかに撮影場所(GPS情報)が記録されるものが多いです。事業所の前や従業員控え室などで、日付や時刻が特定できるような写真を撮影しておくというのも記録方法の一つになるかもしれません。

可能であれば、使用者に自分の労働時間の記録を照会し、手元の記録と照合するなどしておきましょう。

7、ちょっとでも「おかしいな」と感じたときは・・・

NeuPaddy / Pixabay

タイムカードや給与に関しては、いろんな問題が起こりえます。

・準備や片付けの時間の賃金が支払われなかった

・タイムカードを勝手に押された、改ざんされた

・残業分や夜間分の割増賃金が支払われなかった

このようなとき、どんな対応をしたらよいでしょうか。

まず、労働条件を書面で受け取っておきましょう。できれば働き始めた最初がいいですが、気付いたときでもかまいません。
そして、ウェブや書籍などで、疑問点について調べておきましょう。

一人で悩むのは精神的な負担が大きいため、友人や家族、大学のカウンセラー、社労士や弁護士などの専門家に相談することも大切です。

次に、証拠をきちんと残すことです。労働時間の記録をはじめ、日記をつけたり、必要に応じてメールのやりとりや会話の録音を行ったりするなど、証拠を残しておきましょう。給与明細書の保管も重要です。

そして、時期を見て上司や店長のような現場責任者に直接尋ねてみましょう。ある程度の予備知識や証拠があれば、自信を持って質問できるはずです。

ただし、このような行動を異議申立てや反抗と見なし、恫喝してきたり、さまざまな圧力をかけてくることがあります。もし現場責任者が誠実に対応してくれないなら、本社の相談窓口などに話を持っていきましょう。

第3者の窓口として、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、厚生労働省の労働条件相談ほっとラインなど公的な相談窓口に相談することができます。ブラックバイトユニオンという労働組合にも相談できます。

労働基準監督署に調査を依頼するには、「相手方に内容証明郵便を送り示談交渉を提案したが、適切な回答を得られなかった」ことが前提条件になります。

勤務態度に問題がなく、業務命令や職務規律に違反していないなど、自分の側に落ち度がないのであれば、感情にまかせてむやみにSNSに投稿したりなどせず、冷静に着実に、相談の輪を広げていきましょう。

タイムカードや給与のこと以外でも、さまざまなケースが考えられます。

・遅刻や欠勤に対して罰金をとられた

・レジ精算で現金不足のときに給与から天引きされた

・ノルマの強制、未達成の場合の罰金

労働基準法には「賠償予定の禁止」という規定があり、罰金の類は禁止されています。アルバイトを含む労働者の義務は労働力の提供であり、成果を出すことまでは義務ではありません。

・制服代を天引きされた

・業務中に物品を壊してしまい弁償代金を払わされた

制服などは基本的に使用者が提供するものであり、労務中の事故は使用者責任となります(労働者への求償権はあります)。

もし、未払賃金の支払いを裁判に持ち込むとすると、民事調停、労働審判、支払督促、民事訴訟などの選択肢が考えられます。労働問題を専門にしている弁護士を探して相談することをおすすめします。

現実には、法律論を楯にとって杓子定規に物事を進めようとしても衝突することが多いでしょう。相手側もむきになって、じゃあ仕事中はトイレに行くな、あくびも禁止、ということまで言い出すかもしれません。

穏やかな雰囲気での話し合いの中で、お互いの妥協点を見出していくのも建設的かと思われます。

8、小括

FirmBee / Pixabay

いかがでしたでしょうか。タイムカードの話題を通じて、労働時間とはどんな時間なのか、労働時間にはどういう仕事が含まれるのかについてご理解いただけたと思います。

タイムカードなどで労務管理をきちんと行っていない使用者は、労働者に対して正当な給与を支払う姿勢あるのかどうか怪しく、ブラックバイトの可能性が高いと言えます。

もしこれから何かのアルバイトを始めるという方は、採用面接のときに「タイムカードを使っていますか?」「着替えや片付け、などの時間は就業時間に含まれますか?」などと聞いてみて、相手の対応を探ってみるのもいいかもしれません。

9、まとめ

・タイムカードは、使用者側が労務管理のために使うもの

・使用者の指揮監督下にあれば、労働時間とみなされる

・労働時間は1分単位で計算される

・おかしいなと思ったら、調べてみる、証拠を保存する、周囲に相談する