バニラと連呼するアドトラックは合法なの?取り巻く法律と現状の実態

大音量で音楽や宣伝文句を流しながら走り回るアドトラック。
渋谷、新宿、秋葉原などの繁華街で、このような大型トラックに出くわすことが多くなりました。

エンターテインメント系を中心にさまざまな広告を行っていますが、中には高収入アルバイト募集として、風俗系のアルバイトの募集を行っているアドトラックもあります。バニラのアドトラックもその一例です。

このアドトラック、法律的に問題はないのでしょうか?

この記事では、アドトラックに関する法律問題について取り上げています。

1、バニラのアドトラックとは?

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アドトラックは、アド(advertisement:広告)とトラックの合成語です。

車体の荷台部の側面や背面を広告面として装飾し、商品やサービス、イベントや店舗などの広告・宣伝を目的として運行・設置される自動車のことをいいます。

このような広告宣伝車として使用される車輌は、大型トレーラーから軽トラまで様々ですが、トラックが一般的です。その他、ラッピングバスや車体に広告を掲載したタクシーなども含まれます。

商品名や店舗名等を側面・背面に掲示するとともに、音声や映像などによる宣伝を伴って繁華街などを繰り返し低速走行することで、通行人および走行車両に対して直接にアピールしています。

アーティストの新曲発売や新作映画の公開、テレビ番組、ウェブサイト、ネットカフェ、性風俗など、広告内容は多岐に渡ります。

広告宣伝車が運行される場合、道路交通法や道路運送法のほか、各自治体が定める屋外広告に関する条例などに従う必要があります。

バニラは、高収入風俗求人サイト【バニラ】を運営し、デリバリーヘルスなどの性風俗などへの求人を行っています。バニラのアドトラックは、渋谷などでよく見かけられます。

2、バニラは、なぜアドトラックを使うのか?

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さて、バニラはなぜ、テレビCMではなくアドトラックを使うのでしょうか。

昨今のCSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)に厳しい世相を背景に、テレビ各局はポルノや風俗の求人などのCMを流すことに慎重だと思われます。

そういった内容のテレビCMを流せば、世間から非難・糾弾される可能性が高いため、自主規制しているのです。

また、風俗業界は、いわゆる反社会勢力の資金源となっていることも多く、そのような組織と関わる可能性を排除するため、というのも理由の一つではないかと考えられます。

しかし、バニラ側としてはそれでもなんとか求人広告の宣伝をしたい。しかも、ターゲットとする若者にリーチしたい。

そこで、求人対象となる若者の多い渋谷などで、アドトラックを走らせることになったのでしょう。

3、相次ぐ苦情に悩む東京都、そして規制へ

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しかし、アドトラックの増加につれて、東京都に対して都民からの苦情が相次ぐようになります。

苦情の原因として、まずは、騒音の問題です。

昼夜問わず街中で大音量の音を出して走行するため、近くの範囲だけでなく、かなり広範囲にわたって騒音の影響を受けます。音は自然に耳に入ってくるため防御しにくく、聞かなればすむというわけにはいかないために苦情も大きかったと思われます。

そして、公序良俗の問題です。

風俗関係の広告などは、公共空間に馴染まず、街の景観を悪化させているとして問題となりました。有識者による東京都の広告物審議会でも、「公序良俗の面から見て、最近の広告宣伝車は行き過ぎである」との指摘がなされました。

公序良俗とは、民法第90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」の条文を指すといわれています。

風俗営業法に基づいて営業許可を得て風俗業を営業しているなら、公序としては合法になります。一方、良俗とは、社会的妥当性や一般常識や感覚などから判断されるものですので、風俗関係に関しては判断が分かれるところだと思われます。

4、東京都による具体的な規制内容とは?

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そこで2011年、東京都は屋外広告物条例施行規則を改正し、これまで野放し状態だったアドトラックなどの広告宣伝車にも審査制度を導入しました。

条例とは、法令の範囲内の内容につき、地方公共団体の議会の議決によって制定される法形式です。一定の地域内に対してのみ適用されます。

この条例改正によって、デザインなどに対しての公益法人・東京屋外広告協会による審査を通過し、審査済証を交付されなければ区市町村からの許可が下りず、アドトラックを走らせることはできなくなりました。

風俗の求人広告は、公序良俗の観点からの判断で、審査を通過できない可能性が高いと思われます。

条例改正以降、公益法人・東京屋外広告協会では、月に10件程度の審査が行われるようになりました。

5、条例の抜け穴をついて走るバニラのアドトラック

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一見、これで問題は解決しそうですが、そうはいきませんでした。

公益法人・東京屋外広告協会の審査にかかるのは、東京都内ナンバーの車両のみという抜け穴があったのです。

つまり、条例の適用を避けるため、審査対象外の他県ナンバーのトラックを、東京の繁華街を走らせたのです。そういったトラックに対して、東京都の条例では対処できないのです。

具体的には、横浜ナンバー、所沢ナンバーなどのアドトラック車両が目撃されています。

アドトラックの問題はほぼ東京都の問題であり、東京都で条例ができても、近隣他県ではほとんど規制がありません。もし本気でアドトラックを取り締まるのならば、全国の自治体で条例等を制定するか、または全国に適用される法令を国会で制定するしかないのです。

こうした抜け道が存在したため、条例による規制がかけられても、アドトラック問題は好転しませんでした。

なお、この条例には罰則の規定が設けられていません。表現の自由との兼ね合いで、条例では罰則を制定するのは難しいのです。

しかし、条例に違反した広告主、広告代理店、広告業者の公表措置があるため、一定の抑止効果はあるのかもしれません。

それ以外にアドトラックに関する問題としては、ドライバーの多くがヘッドホンやイヤホンを装着して運転していることがあります。「安全運転に必要な交通に関する音または声が聞こえないような状態」であれば、東京都道路交通規則第8条に違反する可能性があります。

また、東京都道路交通規則第18条の「道路において、拡声器、ラジオ、テレビ、映写機等を備え付けた車両等により、放送又は映写をすること」に該当すれば、警察署長の許可を受けなければならないことになります。

さらに、街中で大型自動車を走行させることで、無用な排出ガスの増加や交通渋滞の発生につながっているという問題も指摘されています。

6,小括

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いかがでしたでしょうか。

バニラのアドトラックは、東京都の条例の抜け穴をつく形で、法律的には違法にならずに走っています。

公序良俗の問題、騒音の問題、そして条例の実効性の問題、みなさまはどうお考えでしょうか。

この記事が少しでも皆様のお役に立てたのなら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

7,まとめ

・アドトラックは、宣伝広告を目的として繁華街を走るトラックです

・公序良俗や騒音に関する苦情が相次ぎ、東京都で条例が改正され審査制になりました

・他県ナンバーの車両は審査対象外という抜け穴があり、状況は改善しませんでした